
2020年12月10日
FB過去の思ひ出が〜2016年12月6日

2020年12月10日、FBを開いたら、箸のことがアップされていて、友人からの箸情報を記載したものであった。
テキストにしていたのでその全文をここに記した。
『箸
箸は、食事をする時に使う道具である。『和漢三才図会』には「鳥が嘴でものを啄むのに似ている。それでこう名づける」とある。基本形態は、2本の細い棒が(一膳と数える)で、中心機能は食物をつまむことだが、応用は多彩である。用途によって菜箸、取り箸、めいめい(銘々)箸の3種に大別される。菜箸は、古くは真魚と呼ばれ主に竹製で調理用、取り箸は、1つの皿に盛った料理の各自への取り分け用、めいめい箸は、食事専用の箸。
大小、色柄、材質も多様。特に材質に関しては竹、杉、柳を主にナンテン、桑、紫檀、黒檀などの植物性、象牙、鹿角、獣骨などの動物性、金、銀、鉄、アルミ、プラスチックといった金属製化学合成品などがある。本来、木箸は1回使い捨てだったが、家庭では何度も使える塗箸が主になった。割箸(杉箸)は、江戸末期に使い捨ての非日常的な食事(外食)用に考案されたものである。
神霊と交信する手段の1本
箸は「生命の杖」ともいわれる。そこには、箸が単なる食事の道具ではなく、霊的は力を秘めた神聖な道具であるという意味が込められている。一般に先のと買った棒状の道具には、精霊が宿ると考えれれてきたが、箸もその一つである。とくに、箸は生命を維持する食べ物を口に運ぶ手段であり、なおかつ神祭りにおいては、神と人が食物を供食する呪物としての役割を果たす。そうした機能から、箸には神や霊魂、あるいは生命力といったものに関わる呪力があると考えられてきたのである。
箸の呪力の利用法の一つに1本箸という方法がある。ふつう1本箸といえば、山盛りの飯に箸を立てて死者の枕元に置く枕飯の風習が思い浮かぶ。これは死者の魂を呼び戻すといった箸の呪力と関係するもので、そのため日常ではご飯に箸を立てることを仏箸と呼んで忌み嫌われている。つまり、今日一本は箸は、死者に飯を供える凶事の作法ということになっているのだが、もともと神霊との交信手段だったわけで、本来が不吉なものだはなかった。というよりむしろ、依り代的機能としては、もっとも基本的な形態と言える。その理由は、棒や神木などの役割をイネージするとわかりやすい。つまり「(1本)立てる」ことによって呪力が発揮されることになるのだ。
古くは、神に食物を捧げる飯盛神事において、盛った飯に斎串(いみくじ)をさすことが行われた。斎串は、神霊の依りつく呪物であり、その機能はのちに新しい箸を削って神と食事を共にする風習へとつながっていく。みじかな例でいえば、正月に雑煮やお節料理を食べるのに使う新しい白い箸は、年神様を招き宿らせる呪物であり、そのルーツは神霊を降臨させる1本箸の呪力なのである。
ちなみに、一色八郎「箸の文化史」によれば、祭祀用に用いられる「晴の箸」は主に柳、檜などを素材とした白木箸で、ふつう長さ8寸(約24センチ)。形状は中太両細の「両口箸」である。
生命力を満たした長寿を約束
箸には、新生児の霊魂(生命力)をこの都に招く呪力もある。「箸始め」の儀式は、新生児の100日目に行なうもので、あの世との境界で浮遊している赤子の魂を、この世に呼び寄せて定着させるという意味がある。このきの「箸立て」の呪いに用いられる箸は、魂を招いて宿らせるための目印の役割をすると同時に、赤子がこの世に生きるための生命力を付与し長寿を約束するという呪力を発揮する。
生命力に関わる箸の呪力を象徴するものとして、高僧や貴人が使って大地にさしたものが成長して大木になったという箸立伝説*1)がある。「箸立て」の伝説が残るものとしては、箸立て松、箸立て杉、箸椨、箸榎、箸袴、箸立て葦などがあり、いずれも地面に突き立てた箸が根づいたというものだ。松、杉、欅などは代表的な神木(依り代)であり、ことに松、杉は、生命長久を象徴するものとして常磐木信仰の代表である。
箸は地に突き立つことによって神木となる呪物であり、そこに神霊が降り立つことになる。そして、箸がしっかりと根づいて大木に成長することは、生命力と長寿に関わる呪力を象徴している。たとえば、埼玉県岩槻市の岩槻城内の箸立て杉は、太田道灌が食事のあと「城が長く繁栄するなら、この箸より芽を出せ」と言って地にさしたのが2本の大木になったという。
お守りにも化け物にもなる
神社仏閣から授与された箸も、非日常的な能力を発揮する一種の呪物である。そのご利益の中心になっているのは、延命長寿、開運、厄除けといったものである。材質は杉が圧倒的に多く、長さはだいたい20〜24センチの間で、これは日常的に使われている長さの平均値と考えていいだろう。
お守りになって広く活躍する一方で、妖怪になる箸もある。人間が使い古した道具が付喪神が宿るということでは、箸もまた例外ではない。昔話の「化け物寺」では、寺の古道具類の化け物が次々と登場して自分の名前を名乗って踊り狂うが、その中に皿、茶椀などに混じって箸も登場する。ただ形態的にいかにもシンプルであるためか、妖怪としてはあまり目立ったそんざいではない。
*1 箸立伝説:弘法大使や親鸞上人、源頼朝や義経などの族の高僧や貴人が、使った箸を大地に挿し立で、それが成長して大木になったという伝説。その大木が言威を発するという信仰をともなう場合が多い。
2016.12.9 FB真奈さんより本写真。文字起こしする。』